あの3.11の悲劇から10年という節目に『Fukushima 50』が公開されていたけど、ようやく先日見てみた。
この映画は、あの原発事故を克明に取材した「死の淵を見た男」が原作となっている。
事故の状況が、事実に基づきかなりしっかりと映画化されているようだ。
この映画の中では悪役のようになっている当時の菅直人首相と思われる人物の描き方については、賛否の意見があるらしい。
まぁ、それを言い始めると、イデオロギー対立みたいになってしまうから、この事故の本質から離れてしまう気がするので今回は触れないけどね。吉田調書を見ると、しっかりとその時の状況が書いてあるけど。
https://www.sankei.com/politics/news/140818/plt1408180012-n1.html
ホントにあの時は、関東圏を含む東日本全体が住めなくなる事態になりかねない、恐ろしい状況だったことを再確認できた映画だった。
そして使命感と責任感で、事故現場に最後まで残って対応に当たる人たちに思わず涙が出てきた。
いつ死んでもおかしくないような事故や危機に遭遇しながらも、諦めずに任務をやり遂げた現場の人たちには、感謝の気持ちで胸がいっぱいになる。
それにしても国民が、事故の深刻さ苛烈さを正しく理解できるようになるのは、かなり時間が立ってからだったように思う。
なにしろ情報は飛び交うけど、実際にどのくらい深刻な状況なのか、流れてくるニュースだけでは、正確な現状がほとんどわからなかった。
チェルノブイリ原発事故はレベル7の最大級だけど、レベル4程度の事故という認識で、当初は報道されていたと思うし。
経済産業省原子力安全・保安院が、最悪のレベル7に引き上げたのは、最も危ない時期を超えた4月12日のことだったからね。
本当は、当初からレベル7級の事故だったのにね。
ちなみにアメリカのシンクタンクは、直後から最悪レベル7になる可能性を示していたけどね。
当初から官邸と東電の意思の疎通もうまくいってなかったようだし、東電と現場との間にもかなりの軋轢があったことも、映画を見てよく理解できた。
だから最初は、政府も右往左往するばかりで、この先の状況を予測し対応するなんて、ほとんどできなかった様子を感じた。
中でも最も危なかった14日から15日にかけては、吉田所長が、「これで2号機はこのまま水が入らないでメルトして、完全に格納容器の圧力をぶち破って燃料が全部出てしまう。その分の放射能が全部外にまき散らされる最悪の事故ですから。チェルノブイリ級ではなくてチャイナシンドロームではないですけれども、ああいう状況になってしまう」と語っていた。
「3号機は水を入れていましたでしょう。1号機も水を入れていましたでしょう。(2号機は)水が入らないんですもの。水が入らなければただ溶けていくだけですから燃料が。燃料が溶けて1200度になりますと、何も冷やさないと圧力容器の壁抜きますから、それから格納容器の壁もそのどろどろで抜きますから、チャイナシンドロームになってしまうわけです。」
「燃料が全部外に出てしまう。プルトニウムであれ、何であれ、今のセシウムどころの話ではないわけですよ。放射性物質が全部出てしまうわけですからわれわれのイメージは東日本壊滅ですよ」
という最悪の状況であり、死を覚悟する状況だったようだ。
しかし原因は解明されていないけど、2号機は決定的なメルトダウンにまでは至らなかった。
さらに4号機が3月15日に水素爆発を起こすけど、その衝撃で隣接する場所から水が流れ込み、加熱を食い止めた可能性もあるらしい。
全てに燃料プールはあるけど、この4号機の使用済み燃料プールでメルトダウンが起きた場合、4号機の使用済み燃料プールからの放射性物質の放出量は最も多くなるため、そうなると半径250キロ以内は避難が必要になると想定していた。
実際にはそうはならなかったので、本当に現場の人たちの決死の覚悟と対応のおかげだと思った。
また、吉田所長も、当時の首相も、仏様のおかげとしか思えないとか、神様のご加護のおかげで、というような発言も出るほどの奇跡的な幸運もあったようだ。
ワールドメイト会員ももちろんだけど、全世界の人たちが祈ってくれていたからね。
こちらの過去のブログ記事も参考に。
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そして、映画の中では米軍によるトモダチ作戦が好意的に描かれ、米軍にも感謝したいと改めて思った。
一方では、10年目にして新しくわかった事実として、米軍はデーターを出さない日本政府を全く信用せず、というより日本政府が状況を把握してないことを知って驚愕し、米軍主導で危機に対応しようとする動きが当初から、トモダチ作戦の時もずっとあったらしい。
そして、最悪東京が駄目になった後の日本統治のことまで考えていたようだから、ある意味恐ろしいなと思った。
そもそも日本とアメリカでは、危機管理対応に対する考え方に大きな差があるようだ。
このような世界的な極めて重大な危機に対して、東電や当時の政府のような危機管理対応の素人が主導し、危機管理のプロである軍が主導しないことに対して非常に驚いていたらしい。
まぁ、日本の国の事情がそうしているとは思うけどね。
今後も起こりうることだけに、日本の危機管理に対して、いろいろ考えさせられた映画だった。
そして、映画では描かれてないけど、いまだ復興途上にある被災地の多くが、良い方向に向かってほしいと願わずにはいられなかった。