文藝春秋の、アンドリュー・クレピネヴィッチというアメリカの国防政策アナリストを取材した北朝鮮に関する記事「ペンタゴンが恐れる北の奇襲攻撃」が、とても分かりやすかった。というか、すごく納得がいくことが多かった。
マスコミの報道では、今すぐミサイルが飛んでくるかのような報道もあれば、戦争は起こるはずがないという内容まで、いろんな意見が飛び交ってきたよね。中には戦争になっても、今のうちに北の核を排除すべきだと書く人もいたけど。
いろんな意見を見るのもいいけど、結局何が正しいのか、よくわからなくなってくるよね。
そもそも戦争になるのかどうかの予測自体、かなり困難なことだから。
ワールドメイトでは、もちろん戦争にならないように祈ってきたけどね。戦争の可能性は無いようにいう人もいるけど、こればかりは、絶対というものはないからね。
危機を煽ることはないけど、実際に日本にミサイルが飛んでくる可能性は、韓国以上にあると思えるから。
それで、このアンドリュー・クレピネヴィッチという人の分析によると、「金正恩が日本に対して核ミサイルを打ち込む可能性はある」とはっきり書いていた。核ミサイルを打つなら、日本が最大のターゲットになると書いている。
まず、北朝鮮については、核兵器を放棄することはないし、また、財政を得るために核兵器さえ売買する可能性があると書いていた。これは、誰でも思っていることだと思うけどね。
「粘り強い話し合いで解決の道をさぐれ」、なんてことを書く人も多いけど、そんなあまい考えが通じる相手とは思えないからね。
で、問題はアメリカの対応だけど、北朝鮮問題に関しては、良い選択肢がないことを説明していた。
まず、軍事行動を起こすという選択肢に関しては、マティス長官も言うように、カタストロフィーになってしまうそうだ。理由はいろいろなところで書かれてることと同じで、簡単に言うと、一気に核兵器を全て破壊できない可能性が高いからのようだ。
その結果、反撃されてしまうわけだよね。これも、多くの人が予想できる範囲のことだけど、やはりそうなんだなと思った。
それ以外にも、制裁を強めるやり方、あるいは今までのように北朝鮮が核開発を制限することを願いながら支援は続けるやり方、あるいは金正恩を排除する、または内部から崩壊する可能性など、いろんな選択肢について書かれていたけど、どれも良い選択肢とはならない理由が書かれていた。
で、問題解決の一番のカギを握るといわれている中国に期待する選択肢に関しても、これはワイルドカードだとはっきり言っていた。
その理由もいくつかに渡り、ここは特に力を割いてくわしく解説している。
中国のことをペンタゴンがどのように思っているのか、とてもわかる内容だった。
それを読んだ時、なんとなくワールドメイトで以前から聞いていたことと、かなり頭の中でダブった気がした。
元アメリカの国務長官のヘンリーキッシンジャーは、深見先生と対談したこともあるけど、アンドリュー氏に対して、「中国人は、これまで会った中でもっとも巧みな戦略家だ」と漏らしていたらしい。
巧みな戦略家というと聞こえはいいけど、要は恐ろしいくらいずる賢しこく、したたかな知謀家であり策略家という感じに聞こえるけど。
今、トランプ政権は、ゴタゴタと人事の揉め事続きで、主要なボストでの辞任や更迭が続いている。結果として軍関係の出身者がメインになっているよね。
バノン氏のような経済における対中国強硬派がいなくなって、中国にとっては良い方向に見えるけど、北の核ミサイル問題のことをとても軽視していたから、日本にとっても、良いことなのかもしれないなと思えてきた。
それで現実路線の、国際協調派が強くなるともいわれているけど、中国の深謀遠慮で老獪なしたたかさに対抗できるのか心配な気もするけどね。
でもペンタゴンの中国の分析を読んだ限りでは、軍人関係者が主導権を握っていた方が、日本にとっては良い方向に行くのかなとも思える。
バノン氏のようなアメリカファーストだと、まさかとは思うけど、北朝鮮の核を容認してICBMだけは放棄させるような取引をするんじゃないかと、ふと思ったりもしたので。
それで最初の話に戻るけど、金正恩は、権力の維持が危ないと思ったら、日米韓から権力維持に必要なものを引き出すため、核兵器を使うかもしれないとアンドリュー・クレピネヴィッチ氏は分析している。
そしてその場合、アメリカ本土に核を打ち込むだけの技術はまだなく、韓国には同じ民族が住んでいるから、結局日本が最大のターゲットになるとよんでいるそうだ。
まぁ、これも冷静に考えて、当然そうだろうなとは感じていた。だけど、はっきり書かれると、やはりアメリカの軍関係者もそう思っているんだなと思った。
さらにその場合、日本のミサイル防衛網では、防ぎきれない理由も書かれている。それも、いわれてみれば当然そうだろうなと思える内容だった。
じゃ、その後どうなるのかと言うと、日本としては、同盟国のアメリカに北朝鮮がこれ以上日本を攻撃をしてこないよう対処を求めることになる。
しかし韓国は、アメリカが北朝鮮に攻撃することを断固反対し、融和路線で行くことを求めてくると書かれていた。韓国へ報復してくることを恐れるからだよね。
この展開は、現実的にみて十分すぎるくらいありえるよね。
逆に言うと、北朝鮮もそうなることを予測していて、ミサイルを打ち込むなら核かどうかは別にしても、日本へと思っている可能性はかなり高いんじゃないかと、前から感じてはいたけどね。
今のアメリカが手詰まりになっていることは、誰が見ても感じるし。かといって核を容認して北朝鮮の望むような平和交渉のテーブルにつくことはないだろうから。
アメリカを射程にしたICBMが完成する前に、アメリカが今後どうするのかだよね。
先制攻撃の選択肢が困難と見れば、煮え切らない中国への制裁を強める方向しかない気がするけど、板挟みに見える中国と北朝鮮はつながっているだろうし、いよいよの時は何か行動を起こすように影から仕向けるんじゃないかと、それも怖い気もする。
そうなると、このアンドリュー・クレピネヴィッチ氏が予測しているようなことが現実に起きないとも限らないよね。
とは言っても、北朝鮮がなんだかんだと理由をつけて、日本を奇襲攻撃するシナリオも様々な可能性の一つであり、実際はどうなるのかわからないと言うのが本当だろうけどね。
このアンドリュー・クレピネヴィッチ氏も、アイゼンハワーの言葉「戦争がどうなるか考えたところで、常に予想外のことが起こったり、間違いを犯したりするものだ。予想通りに行った例がない」を引き合いに出して、予期せぬことに直面することを念頭に置いておいた方が良いと言っていた。
予期せぬ大惨事が起きないように、これからもワールドメイトで祈り続けたい。ただ、戦争にならないというだけでは解決にならないので、一番良い形で、この北朝鮮問題が解決するよう、ワールドメイト会員としては、それを願うしかないからね。
アンドリュー・クレピネヴィッチ
米国防総省には各国の戦力評価を担当する部署があり、軍事戦略家、アンドリュー・マーシャルが2015年に93歳で退任するまで約40年間にわたって仕切っていた。クレピネヴィッチ氏はその愛弟子の一人で,昨年日本で出版された「帝国の参謀」では、マーシャルの知られざるキャリアとその軍事戦略を紹介している。ー文藝春秋9月号ー